睡眠障害による社会的な重大事故

睡眠不足によって引き起こされた事故は、実は、これまで多くあります。それも、ちょっとした事故ではなく、とてつもない事故が何度も起きているのです。

まず、アメリカの例を挙げると、あの有名な原発事故、そうですスリーマイル島の原発事故です。また、われわれ日本人もテレビの映像で釘付けになったスペースシャトル・チャレンジャー号の爆発事故があります。真っ青な空にグングン加速するシャトルが一瞬で散ってしまった光景が目に焼き付いています。

そして、旧ソ連の例では、同じく原発事故で、1986年に起きたチェルノブイリ原発事故で、近くの住民は、多くの放射線による被害をうけました。

また、日本でも、新幹線の運転士が時速270kmで居眠り運転をしたことで睡眠障害、特に睡眠時無呼吸症候群が一般に知られるきっかけとなりました。幸い事故にはつながらなかったのが救いです。

これらの大事故や危険性は、その後の詳しい調査によって、その作業者が睡眠不足によってミスを犯したことが判明しています。睡眠不足や睡眠障害と言っても、自分の周りの事故に限らず、このように多くの犠牲者を出す大事故にまでつながるのです。

このような事故を検証すると、睡眠が充分にとれない状態で作業をすると集中力が欠け、とっさの判断力ができず、通常では起きないミスを引き起こしてしまうことがわかります。職業によっては、直接人の命を預かる仕事をされている方の場合、たとえば、飛行機の操縦士、電車やバスの運転手、大規模な機械を操作するオペレーターなど、先ずは、睡眠不足や睡眠障害になったときの影響を認識して、日頃の自己管理に努める必要があります。

それでは、具体的に睡眠不足になると、どのくらい危険度が増すのでしょうか。交通事故の場合で比べると、睡眠不足の人は、よく眠っている人に比べて、事故を引き起こす確率が2~3倍高くなるそうです。もし、日本全体が同時に睡眠不足となった場合を考えると、一気に交通事故による死亡者が増えることになるのではないでしょうか。

アメリカでは、この交通事故などの経済的損失を、年間460 億ドルと算出しています。また日本でも、日本大学の内山真教授(精神神経医学)が、睡眠障害による経済損失として年間約3兆4700億円という数字を試算しています。これらの数字を見ると、たかが睡眠不足・睡眠障害と軽視してはいけないことが一見しただけでわかります。

アメリカの行政は、大事故が発生したこともあり、睡眠障害に関する対処が明確です。「国立睡眠障害センター」が設立され、ここを拠点として、睡眠についての研究や医学的な教育、また、一般の人々にも理解してもらうような活動を展開しています。データによると、アメリカでは、4,000 万人(人口の約15%)の人たちが、睡眠に関しての何らかの異常をもっているとのことなので、自体は深刻なのです。

日本でも、最近行政も動き出しました。昔は、睡眠障害や不眠症を個人的な問題だからと片づけられてしまっていましたが、厚生労働省が推進している「健康日本21」という活動を通じ、睡眠を改善することにより、生活習慣病、産業事故、うつ病、自殺を防いでいこうという活動しています。

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