一時的な不眠は心配無用

睡眠障害(不眠)には、一時的なものと慢性的なものあります。一時的な不眠は、1日~数日または数週間程度続くだけで、長引くことがなく自然に健全な睡眠状態に回復してきます。一時的な不眠は、気持ちが高ぶった場合や、気がかりなことを抱えている時などに起きやすく、人によってその原因はいろいろです。

誰でも思いつくのが、時差ぼけです。無理矢理、時間帯をずらされる事による不眠です。また、列車の騒音や夏の温度・湿度の不快感などによるものもで誰でも経験します。まれに、愛する人が亡くなったときなどには、ショックが大きく精神的なストレスがかかり、一時的とは言ってもかなり長い不眠に陥ることもあります。ビジネスマンであれば、大事な商談の前日は不眠になるかもしれませんが、それが過ぎてしまえば元に戻ります。

一時的な不眠は、病理的には問題ないと言えます。なぜなら、自分でその原因がわかっており、短期間で回復するからです。不眠中はとてもつらいものですが、すべて自分で把握できる状態であれば、自分名なりにも納得できる不眠なので、それほど気にする必要はありません。

人間は原始の時代から、自分の命をまもるために、まわりに危険や心配事があると、眠らないようにする動物的な本能を作り上げたのです。現代においても、その本能が残っており、自分の降り注ぐものに敏感に反応して、それが、自分にとって嫌なことであったり、悲しみであったり、緊張であったりすると、不眠状態となってしまうわけです。

その仕組みをもう少し見てみると、人間は本来、体内時計の働きによって、生活のリズムが健全な状態を保っていれば、決まった時刻に寝起きできるのです。ところが、たとえば、緊張感をかかえたまま寝ようとすると、脳が覚醒し続けるように働くので眠ることができなくなってしまうわけです。

原始の時代には、人間は、他の動物と大して変わらない生活をしていました。つまり、危険と隣りあわせで生活する機会が多かったのです。そんな環境の中では、決してゆっくり眠っていられるわけはありません。そんなときは、脳は自然と覚醒し続けようと働くのでしょう。その本能的な働きが、現代に生きる私達の遺伝子に受け継がれているわけです。

関連コンテンツ

  • アルツハイマー型認知症の昼夜逆転と夜間せん妄

    アルツハイマー型認知症の方には昼夜逆転が多く見られます。アルツハイマー病の原因はいまだに不明といわれていますが、症状としては、脳が次第に萎縮していき、それにつれて知能、身体全体の機…

  • 概日リズム睡眠障害が一番多い

    睡眠障害で悩んでいる人の中には、夜寝ようとしてもなかなか寝られず、その分、朝起きれず、昼頃や夕方に起きたりする人がいます。これは、生体リズムが正しく働いていない状態で、概日リズム睡…

  • 夜勤の方には睡眠障害が多い

    昔、夜勤の代表職の一つと言えば、看護婦さんでした。夜中に患者を看病して尽くす白衣の天使などと呼ばれて人気があったのではないでしょうか。しかし、夜勤というのは実際にはとても厳しい仕事…

  • 高齢者は不眠になりがち

    高齢者の方は、朝早く起きることは皆さんご存知ですよね。同様に、眠る時間もかなり早くから眠る傾向があります。これは、人間の持っている生体リズムが、老化とともに機能低下してしまうことが…

  • 妊娠と眠気

    妊娠すると、昼間でもとても強い眠気に襲われることがよく知られています。それは、子孫を残すために女性に備わった本能とでも言うべきでしょうか。 妊娠するということは、子孫を残すた…

  • 睡眠時遊行症について

    睡眠障害のなかで、めったに聞かない症状として、睡眠時遊行症というものがあります。「夢遊病」と言い換えると、聞かれた経験を持たれている方が比較的多きかも知れません。 とても深い…

  • レム睡眠行動障害について

    レム睡眠行動障害(RBD)も、めったに聞かない名前の症状です。レム睡眠行動障害(RBD)は、特に大人に発生する症状です。 通常、レム睡眠というのは全体の10~20%程度で、こ…

  • 過眠症という睡眠障害もある

    睡眠障害というと、睡眠不足や不眠と連想してしまいがちですが、実は、その反対に眠くなってしまうという病気があります。もちろん睡眠不足で眠くなるのではありません。過眠症といって、ナルコ…

  • 時差ぼけも急性睡眠障害

    時差ぼけは、海外旅行をされた方の多くが経験されるとおもいますが、急性の睡眠障害と言えます。時差ぼけの原理は、説明するまでもなく明快です。人間の体内時計は日本の時間のまま動いているの…

  • いびきと睡眠時無呼吸症候群

    いびきも睡眠障害と関係があります。まず、いびきの仕組みをみてみると、睡眠中は舌の筋肉や喉の奥の筋肉が緩むので、これによって気道が狭くなります。そして、軌道が狭くなると、呼吸による空…