Valkeeは耳から光を照射するという新しい光療法器具として2011年に販売開始され、その後、ヨーロッパで医療機器として認可されました。耳からイヤホンで光を照射する方法なので簡単に光療法が実施でき、時差ボケ、睡眠障害、冬季うつ病の対処法として注目を集めました。
ところが、最近の複数の文献によってValkeeには期待されたような効果が無いことが判明し、一気に状況が変わりました。Yahoo知恵袋にValkeeの効果に関する投稿と詳しい回答が記載されています。
一言でいえば、Valkeeの主張は主観的評価、つまり、「個人的な感想」を集めたものに過ぎず、客観的な試験評価では効果が確認されなかったということです。一つの文献が否定的な結果を出すだけでは不十分ですが、複数の研究文献によってそれが示されたわけです。日本睡眠学会の学会誌に掲載されるほどですから、その信頼性は十分に高いものです。
日本睡眠学会の学会誌: “Sleep Biological Rhythms”
アスリートにも広がりかけたが...
もともとValkee は、2007年からフィンランドのオウル大学が中心となって臨床研究から開発され、冬季うつ病や概日リズム睡眠障害の治療、時差ボケ解消などの効果をうたっていました。
実際にアスリートの間にも時差ボケ対策として広がり、NBAバスケットボールやプレミアリーグのサッカーチームで使用している選手がいるそうです。
日本でも、サッカー日本代表チームが一時的に使用しましたが、効果がないことがわかり現在は使用していないようです。
アメリカのFDAはValkeeを認可せず
ヨーロッパの医療機器と言われてきましたが、アメリカのFDA (アメリカ食品医薬品局)は医療機器として認可しませんでした。したがって、公正に言うならば、ヨーロッパでは○、アメリカでは×と併記すべきです。
Valkeeが注目を浴びたのは、下記の文献によるところが大きいと言われています。
Transcranial bright light and symptoms of jet lag: a randomized, placebo-controlled trial.
タイトル訳:耳からの高照度光と時差ボケの症状:プラセボを対象とした無作為試験
内容を一言で要約すると、55人の被験者に対して、フィンランド~北米間を飛行機で移動する際の時差ボケ改善効果を確認する試験を行った結果、Valkeeを使えば時差ボケから回復する期間が半減した、というものです。
ところが、この試験方法が問題で、被験者に対して質問紙による主観的な睡眠感と疲労感の改善を問うものでした。実際に、メラトニンや深部体温を計って体内時計を評価したものではなかったのです。つまり、科学的・客観的な証拠はなかったということになります。アメリカのFDAが認可しなかったのは当然と言えます。
主観的評価が必ずしも悪いというわけではありませんが、客観的評価の裏付けのない主観的評価は意味がありません。Yahoo知恵袋に紹介されている文献は、これらの客観的評価を行った結果、Valkeeに訴求されているような効果は無いことが示され、複数の文献で一致した内容となっています。
Valkeeへの疑問
それにしても2011年に販売開始されてから数年経過しているにもかかわらず、Valkee自身がこれらの客観的評価を行ってこなかったことに疑問を感じます。高照度光療法(ブライトライト・セラピー)との比較試験を行っていないことも不思議です。普通に考えて、最初に評価しなければならないことを実施していません。
日本でも、既にアマゾンやヤフオク等々で販売されています。メディアでも何回も取り上げられました。ブログでValkeeについて詳細に取り上げて効果があった書かれている方もおられます。逆に効果を感じなかったという方もおられバラバラではありますが。
これらの客観的な評価結果を知ってがっかりされる方が多くおられるのではないでしょうか。